龍がみえるあの人が特別な訳じゃない
あなたの一番の味方で居続けてくれた人。
食べこぼしを笑いながら片付けてくれた人。
お出かけの時に、
早くその場所につきたくて何度も何度も
「あと何個で電車降りる?」
同じ質問にずっと付き合ってくれた人。
時には、
明日地球が爆発するんじゃないかっていう勢いで
大喧嘩した相手。
嬉しいことがあった時、
自分以上に喜んで涙を流してくれた人。
そんな自分を育ててくれた人に対して。
怒鳴り散らしてしまう
冷たく当たってしまう
もう一緒にいるのは無理、
限界だと感じてしまう自分はダメなんじゃないか。
そんな悩みを私は。
これを読んでくれているアナタが想像する以上にたくさん聞いてきた。
認知症という言葉自体は知られていても、
実際、その症状に直面したら
戸惑う人がほとんどだ。
そして認知症という症状は
「はい、熱が40度です」
というような、
すぐに分かるようなものとしてやってこない。
少しずつ少しずつ
なんだか変だ。
あれ?
これってもしかして?
そういったところからやってくる。
同じ話を何度も繰り返し
家族であるあなたのことを知らない人として扱い。
時には。
お前が私のお金を盗んだだろと怒鳴り散らされ、
いつの間にか洗濯機に放り込まれた下着には、
目を背けたくなるような汚れがついている。
オムツを提案しても
ふざけるな、バカにするなと拒否され。
あなたのスマホの検索履歴は、
毎日の献立でもなければ、ファッションでもない。
趣味のことでもない。
介護のことで
溢れかえっているのではないだろうか。
何か良い方法はないかと探しているうちに
1日が終わり。
夜中に一人っきりで
誰にも相談できずに
泣いているかもしれない。
相談できない理由も、私は知っている。
だって。
ずっと自分を育ててきてくれた人だ。
たくさんの優しさとあったかさと厳しさを
教えてくれた人だ。
そして、もうひとつ。
施設に頼ろうとしたあなたの決断に
育ててもらった恩を忘れたのか
家で何故みれないんだ
仕事なんて休め
感謝の心はどこに行った
恥知らず
そうやって。
縁は切れないような関係の人からの
手も出さない
お金も出さない
VIPルームからのその言葉に
たくさん傷ついていることを知っている。
SNSで少し気を紛らわせようと
“疲れた”
とつぶやけば
高次元にいないから
波動が足りないから
あなたには今、龍がついていないから
そんな返事をもらった人の話も何百回も聞いた。
あなたに今必要なのは、
龍でもなければ波動でもない。
スピリチュアルの力で救われるなんて、
私は一切思わない。
だって本物のスピリチュアリストは、
そんなゴミ箱に捨てるような言葉を
絶対言わないって知っているからだ。
こちら側からは決して開けることの出来ない、
VIPルームの人の言葉だって必要ない。
自分と相手の心と安全のために、
あらゆる雑音を跳ね除けて。
施設に任せようと決断して。
定期的に面会に来てくれる。
それでもどこか浮かない顔をしている
あなたのことを
私は、気にかけている。
“いつまで介護が続くんだろう”
そう思うことは
大切な人の死を願っているのでないか。
どうかそれが錯覚であることに気がついて欲しい。
あなたがずっと守ろうとしてきたのは
あなたの心だけじゃない。
大事な人の身体を見たらすぐに分かる。
大きな褥瘡(床ずれ)をつくらず
痩せこけることなく
お願いしますと言いにきてくれた。
それは相手の心と笑顔も守り続けたいと思ったからだ。
家族だから、できないこと。
家族だから、言えないこと。
家族だからこそ、
関わることに限界を感じてしまうこと。
楽になりたい“だけ”で施設に頼っている訳じゃないこと。
私はそれをよく知っている。
笑顔でいることも
元気でいるということも
とてもとてもエネルギーがいる。
自分も相手も。
大事にしようとした。
お互いが笑っていられる選択をした。
どうかそれを誇りに思って欲しい。