慣れたくない看護だってある
COVID-19(新型コロナウイルス)のことについても書いてあるので、その話題が苦手な方や疲れてしまった方はページを閉じることをおすすめします。
実際の看護の現場のことを書いているので読んでもいいなと思ってくださった方が読んでいただけたらなと思います。
目次
看護師の私がよく聞かれること
『亡くなった人を看取ることは悲しくないの?慣れちゃうものなの?』
これは、看護師になりたての後輩や友人、患者さんやご家族からも聞かれることが多いです。
答えから言ったら悲しいし慣れません。
ただ、亡くなった患者さんを看取る時に私たち医療従事者側が泣いてしまっていては、その後の仕事が滞ってしまったり何よりご家族が悲しむ時間を奪ってしまうことになります。
隠れて休憩室などで泣くことは勿論ありますが、最期までその人らしい顔や姿で過ごして欲しいから笑顔でお別れができるように現場に立っています。
2度と担当したくない患者さんよりも出来ればもう起きないで欲しいと願う事件
『嫌な患者さんとか、担当したくない患者さんとかいないの?』
これも聞かれることが多いですが、もう2度と嫌だとか担当したくないとか今のところ私はないです。
勿論、同業者の方からみて、え?嘘でしょ?いるでしょ?と思う方も沢山いるとは思います。
ただ、薬の副作用や病気が患者さん自身の性格を変えてしまっているということがあると知っているので割り切るようにしています(担当なら担当で仕事を全うしようと思うということです)
病室でタバコを吸う患者さんに対しては医師がしっかり指導をしてくれるので(看護師に対しての態度も含め)、そういう点でも安心して働ける部分はあります。
看護師は患者さんを選べないので、割り切るようにする技術はだいぶ身についたかもしれません。
それよりも、例えば不慮の交通事故で身体が目も当てられない状態で運ばれてくる患者さんや連続殺人事件がおきた時のようにトリアージをしなければならない
そんな看護は正直身体的にも精神的にもかなりきついので2度と起きないで欲しいなと願っていたりもします。
COVID-19(新型コロナウイルス)の患者さんの看護
COVID-19の患者さんと接する場合、最小限の人数しか部屋に入れません。
感染のリスクを必要最低限にするためと資材の減少を最小限にするためです。
病室には基本的に担当看護師だけが入ります。
漫画のような防護服を身につけて、身体は暑いしゴーグルをつけて採血や点滴をするのでいやでも成功率は落ちます。
入院している患者さんは自立している患者さんばかりではありません。
認知症の人や医療的なケアが多く必要な人。
看護師がその部屋から2時間以上出てこれないことも普通にあります。
病院側からの感染リスクとして、
シーツは汚れていなければ必要最低限の交換
清潔ケアも必要最低限
ということは言われていますが実際はそうもいきません。
便が付着したシーツをそのままにはしないし、失禁をした患者さんは飛沫対策として拭き取るだけと通達がきていますが実際は綺麗にしてケアをしています。
認知症の患者さんは、排泄のケアをされることに抵抗がある方も多いですし、看護師側は殴られたり蹴られたりすることもあります。
普段なら誰かと一緒に入ってケアする時だけ身体をおさえてもらうということをするのですが、今は2人でケアに入ることも中々難しくなっています。
そして普段とは見慣れない姿(マスクに帽子にゴーグルに防護服)に抵抗する患者さんも多いです。
この状況が病棟に1人、2人という話ではないのが現状です。
いつか絶対に終わりがくると思っていても、それがいつなのか分からなくて不安になるのは看護師も一緒です。
自分が感染するかもしれない、誰かを感染させるかもしれない
そんな不安と隣り合わせの日々です。
COVID-19の患者さんを看取る時
一部メディアでも報道があるように、COVID-19の患者さんは面会が一切禁止です。
どんなに頼まれても危篤の状態になったとしても
面会は一切お断りしています。
この状況下なので、ご家族の方に病棟の待合室やロビーで待機していただくこともお断りしています。
病院によって対応が違うとは思いますが、お看取りの時はご家族の方が代表して1名のみ面会をしていただいています。
ただ、ご家族の方にも、ゴーグル、マスク、帽子、防護服、手袋をつけた状態で面会をしていただいているので
『普段通りの姿で会える』
というものとはかけ離れています。
今までとは圧倒的に違う看護に毎日のように戸惑いながら、なんとか納得させて働いています。
看護師の本音
本当のことを言ったら、こんなの看護じゃないって何度も思う
制服から私服に着替えた途端に泣くことだって何回もある
汚れたシーツをすぐに交換できないことも
COVID-19の患者さんが急変したら、すぐに部屋に入れないことも
その間にどんどん救命率が下がっていくことも
ずっと頑張って治療をしている患者さんの最期にご家族が立ち会えないことも
ご家族との時間を過ごす時間をつくれないことも
こんなの私がやりたいって思ってる看護とかけ離れて過ぎていて
今までの看護とかけ離れすぎていて
病棟の皆が理想とする看護ともかけ離れてる
どんどん資材が足りなくなる恐怖
自分が感染するかもしれない恐怖
誰かに感染させるかもしれない恐怖
もしかしたらもう今年は親と会えないんじゃないかって寂しくなる気持ち
SNSで見かけた、パチンコに行く人の中にコロナの患者を混ぜればいいという発信
そんなことをされたらすぐに医療現場は崩壊する
なりたくてなったわけじゃない患者さんはいっぱいいる
それこそ懸命に治療や看護に当たっていても感染してしまった医療従事者だっている
どうやったら実際の現場を伝えられるんだろうっていつも考えて分からなくなる
1通の手紙
私が働く病院ではCOVID-19の患者さんを受け入れてる状況から、システム担当さんがつくってくれた制度があります。
それは一緒に働く仲間たちに応援のメールを送ろうというもの。
看護師から看護師に送ってもいいし、看護師から事務さんや警備員さんに送ってもいい。
病院の関係者であれば誰でも可能ということです。
匿名で送れるのでそのサイトをクリックすると毎日のように応援のメールを見ることができます。
患者さんやご家族からは投書で入っているので、それをシステム担当さんがメールに打ち直して皆がみられるようにしてくれています。
非常事態宣言が出される前、病院の近くで遊んでいた男の子が怪我をしたので私が手当てをしたことがあります。
あの病院で働いているんだ。
そう伝えてバイバイをしたのは3月のはじめだったと思います。
その男の子から手紙がきていました。きっとお母さんと一緒に書いてくれたんだと思います。
あのときたすけてくれてありがとう
コロナとたたかってくれてありがとう
ボクもおうちでがんばる
そんなことが書いてありました。
いつもゴーグル、マスクのきついゴムのあとが私の顔には残ります。
電車に乗っていると笑われたり、二度見されることもあります。
でも
こんな風に言ってくれる人がいるんだったら頑張ったしるし
そうやって思おうと決めました。
2回連続陰性になって退院していく患者さんも沢山います。
いつまで続くか分からない自粛期間
沢山の不安と恐怖
それでも
自粛に協力してくださっている方々のおかげがあることを私は忘れません。
沢山の敬意をあなたにおくります。
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